企業における労働力・人手不足は、昔から少なからず叫ばれている課題です。
ただ、この課題の提唱は留まるところを知らず、それどころか近年より一層問題視されているといえるでしょう。
このような状況で、「なぜ人手不足に陥るのか」「人手不足を解消したいがどんなことをすべきかわからない」と悩みを抱えている企業も多いのではないでしょうか。
この記事では「日本における人手不足の現状と原因」「改善に繋がる解決策」などをわかりやすく解説します。ぜひ最後までお読みください。
目次
日本の人手不足の現状
企業における人手不足とは「必要な人材が集まらず、業務が円滑に行えない状態」のことを指します。
信用調査会社・帝国データバンクが2022年10月に行った「人手不足に対する企業の動向調査」によると、人手不足を感じている企業の割合は「正社員で51.1%」「非正社員では31.0%」に達している結果となりました。
また、2022年10月時点で正社員の人手不足割合が高い上位5業種は、以下の通りです。
1位 | 情報サービス | 69.1% |
2位 | 旅館・ホテル | 65.4% |
3位 | 飲食店 | 64.9% |
4位 | 建設 | 64.5% |
5位 | 運輸・倉庫 | 63.8% |
参照元:株式会社帝国データバンク|人手不足に対する企業の動向調査(2022年10月)
近年のDX需要やデジタル化推進の波を受けてか、「情報サービス」が人手不足を最も感じる業種となりました。
また、2位・3位には一般的にサービス業と呼ばれる「旅館・ホテル」「飲食店」がランクインし、ウィズコロナにより観光地へ人が戻りはじめた影響を受けていると思われます。
人手不足の原因
前項にて紹介した調査結果の通り、多くの業界や業種が人手不足を感じています。
では、その原因は何なのでしょうか。
こちらでは、代表的な3つの原因をみていきましょう。
少子高齢化による生産年齢人口の減少
人手不足の大きな原因に、少子高齢化によって生産年齢人口が減少していることが挙げられます。
内閣府が発表している「令和4(2022)年版高齢社会白書」では、以下のようなデータが公表されています。
引用元:内閣府|令和4年版高齢社会白書「1 高齢化の現状と将来像」
これから生産年齢人口に入る14歳以下の割合が年々減少傾向にあり、生産年齢人口とされる年齢層(15~64歳)の割合も1995年頃から減少の一途をたどっています。
さらに、2025年以降も減少し、2065年には生産年齢人口がピーク時の半分程度となることが予測されています。
この現状と予測を見るに、現状のままでは今後さらに人材の確保が難しくなることは明らかでしょう。
離職者と退職者の増加
人手不足には、社員が会社から去ることも大きく影響します。
厚生労働省が発表している「令和3年雇用動向調査結果の概況」によると、2020年の離職率が入職率を上回っており、これは2011年以来9年ぶりの数値です。
2020年は、新型コロナウイルスへの感染者が国内外で確認され、感染拡大が始まった時期です。
この数値から、コロナ禍の状況において働きやすさが変化したであろうことが見て取れます。
今までと決定的に異なる点は、「感染症の影響で離・退職を選択する人が増えた」という点です。
離職者は「仕事から離れる人」、退職者は「仕事を辞める人」を指すのですが、コロナ感染により働けなくなり離職を余儀なくされた人、コロナの影響で働きづらさを感じて退職を選択する人など、今までと違う理由で職場を去る人材が増えています。
コロナと共に生きるための環境作りをしなければ、人手の安定化は行えないでしょう。
生産性の低さ
人手不足は、単に「働く人の数」だけが原因ではありません。働き手の生産性も大きく関わっています。
労働という観点から見た「労働生産性」は、労働者1人あたりもしくは労働1時間あたりでどれだけ成果を生み出したかを示すものです。
公益財団法人 日本生産性本部が行った調査「労働生産性の国際比較 2022」によると、2021年の日本国民1人あたりの労働生産性は、OECD(経済協力開発機構)に加盟する38ヵ国のうち29位という結果が出ています。
また、時間あたりの労働生産性も、38ヵ国中27位という振るわない結果です。
これら数値から、日本の労働生産性の低さが伺えるでしょう。
生産性が高ければ少ない労働力で多くの仕事を処理できるはずが、その低さによってより労働力を必要としなければならない状況を招いているのです。
人手不足がもたらす悪影響
人手不足は、企業内にどのような悪影響を及ぼすのでしょうか。
厚生労働省が提示した「令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-」には、人手不足がもたらす影響について以下のような記載があります。
人手不足が企業経営に及ぼす影響についてみると、人手不足が、自社の会社経営に影響を及ぼしている企業は、全体の72.4%に及んでおり、そのうち22.5%は、「大きな影響を及ぼしている」状況にある。また、「現在のところ影響はないが、今後3年以内に影響が生じることが懸念される」企業は全体の23.5%を占めており、多くの企業にとって、人手不足は、自社の会社経営に影響を及ぼす又は及ぼしうる喫緊の課題となっていることが分かる。
人手不足が自社の会社経営に及ぼす具体的な影響をみると、「既存事業の運営への支障」が最も多く挙げられており、次いで、「技術・ノウハウの伝承の困難化」「既存事業における新規需要増加への対応不可」「余力以上の人件費の高騰」など「会社経営に悪い影響」が多く挙げられている。
人手不足が職場環境に及ぼす具体的な影響をみると、労使ともに、「残業時間の増加、休暇取得数の減少」が最も多く挙げられており、次いで、企業では、「能力開発機会の減少」「離職者の増加」、労働者では、「従業員の働きがいや意欲の低下」「離職者の増加」などが挙げられている。
引用元:厚生労働省|令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-「第3節 人手不足が企業経営や職場環境に与える影響について」
この内容から、人手不足は会社・労働者それぞれにさまざまな悪影響をもたらしていることがわかります。
中でも、「離職者の増加」という影響に関して、「人手の不足によって既存の労働者が離職する→さらなる人手不足に繋がる」という負のスパイラルが起こっています。
今ある貴重な人材を守るためにも、人手不足状況の早急な改善が求められるのです。
人手不足改善に繋がる5つの解決策
人手不足は、経営危機に陥るリスクや労働環境の悪化で生産性低下を引き起こすなど、企業に与える影響は甚大です。
最後に、人手不足改善に繋がる解決策を5つご紹介します。
働き方の改革
働き方改革は、「働き手が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で選択できるようにすること」が目的です。
よく挙げられる取り組み例が、以下のものです。
- 長時間労働の是正
- 雇用形態にとらわれない待遇の確保(正社員と非正規社員の格差解消)
- 賃金引き上げ
- 育児・介護との両立がしやすい勤務形態の整備(時短勤務・フレックス・リモート勤務などの導入)
自身の事情に合わせた働き方を選択できるということは、その分働きやすさが感じやすく、離・退職が起こりにくくなります。
自社での働き方で改善すべき点は何か、しっかり見極めて改革を行いましょう。
採用時のミスマッチを減らす
人手不足の原因には「企業内でのミスマッチ」も考えられます。
企業内ミスマッチとは、企業が求めている人物像と求職者が望んでいる企業像が上手く伝わっておらず、「本当に欲しい人材が獲得できなかった」「本当に入りたい企業に入れなかった」という状況が生まれていることです。
企業内ミスマッチを発生させないためには「採用時点でのミスマッチを減らす」ということが重要です。
自社に本当にマッチした人材を獲得し、離・退職を防止するため、採用活動を行う際に企業側は以下のような事項に気を付けましょう。
- 業務内容や雇用条件を詳しく説明する
- 社風や企業としての方針を正確に伝える
- 採用後は丁寧にフォローする
など
多様な人材を雇用
性別や年齢、国籍を問わず、幅広い人材を雇用することも人手不足改善の解決策となります。
例えば、今までは雇用する人材の性別に偏りがあった業種もあるでしょう。
また、高齢者を雇用の対象から外していたり、外国人の雇用には積極的でなかったりした業種もあると思います。
テクノロジーの活用や仕組み作りによって、昔に比べ、性別や年齢、国籍が違ったとしても同じように行える仕事が増えてきました。
今までの固定観念や方針にとらわれず、雇用する人材の幅を広げる姿勢が重要です。
外部リソースを活かす(アウトソーシング)
自社で新たな人材を雇用・育成できない場合には、外部リソースを活用するとよいでしょう。
例えば、繁忙期など一定期間内のみの人手不足を解決したいのであれば、派遣社員を雇うことでリソースを確保できます。
また、近年ではフリーランスの人材が増えており、アウトソーシングサイトが充実しているため、自社の業務を外部へ委託するハードルが低くなっています。
業務自動化ツールの導入
人材を新たに雇用するのではなく、業務自動化ツールを導入して人的リソースの不足を補うことも効果的です。
自動化ツールの代表的なひとつであるRPA(Robotic Process Automation)は、人がPC上で行う作業を自動化する技術であり、業務効率化に貢献します。
仮にPC上の単純作業をRPAに任せた場合、人間が他の業務に集中できるようになり、生産性が向上するかもしれません。
人材不足を解決するために人を雇うのではなく、機械に任せられるものは任せてしまうことで、リソース不足を劇的に改善できる可能性があるのです。
ツール・機械を活用して人手不足を解消しよう|RPAの導入ならタクトシステムへ
人手不足は、日本の企業において早急に改善すべき問題として捉えられています。
ただ人材は、簡単に獲得できるものでも、上手くコントロールできるものでもなく、不足状況の改善には相当な労力を要するでしょう。
人手不足の解決のため、コントロールが難しい人材ではなく、ツールや機械に頼ってみてはいかがでしょうか。
業務自動化ツール・RPAは、PC上で行う単純作業や繰り返し作業を人間の代わりに実施することが可能で、それらをRPAに任せることで、浮いた分の人的リソースを他の業務に充てられます。
タクトシステム株式会社では、「SynchRoid」を含むRPAや、RPA導入支援サービス「ハカドリRPA」を提供しています。
「RPAに業務を任せて人手不足解消を図りたい」という方は、ぜひタクトシステムまでお問い合わせください。
\うまくいかないRPAでお悩みなら/
RPAのロボット作成代行
導入、運用・メンテナンス、乗り換えを伴走サポート
RPAツールSynchRoidをはじめ、複数のRPAツール導入支援を行っています。
あわせて読みたい
RPAが向いている業務やRPA化できる業務は?事例をもとに解説
RPAが向いている業務の特徴/RPA化できる業務の事例/RPAに向いていない業務の特徴/RPA化におけるポイント/RPA化の流れ