IRODORI 校正・校閲

校正記号ってどうやって使えばいいの? よく使う記号を一覧で紹介!

2023.03.02 木

DTP制作会社から送られてきたカタログやパンフレットの校正刷りをチェックしていて、数値に誤りが見つかった! または文章を手直ししたくなった!というとき、修正指示を書き込んで制作会社に戻しますよね。でも、その後の校正刷りで思った通りに直っていなかった……という経験はないでしょうか?

正しく直しが上がってこないと、やり直しの分だけ時間もかかってしまいますし、最悪の場合、間違った販促物ができあがってしまうおそれがあり、いいことがありません。
そこで! 直してほしいところがキチンと修正される頼もしい味方「校正記号」と、その使い方についてご紹介させていただきます!

 

 

どうして思ったとおりに直らないの?

話を戻すようですが、まずは「なぜこちらが思っていたように直ってこないのか?」というところから考えてみましょう。その原因としては修正者側(オペレータ)が指示について

1.見落とし
2.誤解
3.勘違い

をしていると予想されます。

見落とし

オペレータが修正指示に気づかなかった場合、当たり前ですが修正前と同じ状態で次の校正刷りが上がってきます。書き込まれた指示が小さかったり、文字やデザインの入り組んだ場所にあったりすると見落とされがちです。

誤解

修正指示があいまいだったため、間違えて解釈してしまったケースです。
“蹲踞”が難しい漢字なので、読みを入れたいと考えたとします。このとき、漢字の近くに「読み仮名入れる(そんきょ)」と書き込んだ場合、漢字の上にふりがな(ルビ)を入れるか、漢字の後ろに続けて丸かっこでくくった読みを入れるかという二通りの解釈ができてしまいます。指示者がどちらを意図していたのかは校正刷りを見ただけではわからないので、考えていたのとは違う修正をされてしまう可能性があります。


※例文は『Wikipedia:蹲踞』より使用いたしました。

 

勘違い

誤解と似ていますが、ここではもっとシンプルな間違いのことを指します。たとえば文字を入れる位置や、修正する範囲を見間違えた場合などです。殴り書きされた修正指示を読み間違える、などもこの部類に入ります。

こうしたミスコミュニケーションを防ぎ、制作がスムーズに進められるように、修正指示の入れ方のルールが定められています。それがJIS Z 8208:2007です。

 

よく使う校正記号一覧(JIS Z 8208による)

JIS Z 8208はもともと1965(昭和40)年に制定されたJIS規格で、DTP組版への対応を主な目的として2007(平成19)年に改正されました。
 
規格の序文には「印刷校正記号を規定し,校正の指示内容を明確にすることによって,印刷物作成の能率向上を図ることを目的としている。」とあり、業界の標準ルールとするべく定められた経緯がわかります。修正指示の入れ方を統一すれば、間違いも減るよね!ということです。
 
JIS Z 8208で定められた校正記号は以下のサイトなどで閲覧できますが、ここでは書き方の基本的なルールと、カタログやパンフレットで使う機会が多い校正記号11種類を紹介しましょう(説明や記入例は横組みの場合を想定しています)。

日本産業標準調査会のデータベース(閲覧にはログインが必要)
JISZ8208:2007 印刷校正記号 - kikakurui.com
 
 

校正記号の書き方

押さえておきたい基本ルールは以下の2点。
 

赤字で書く

記入には赤色のペンを使います。修正指示を「朱筆」や「赤字」と呼ぶのはここから来ています。
修正指示を目立たせ、見落とされないようにするのが主な目的なので、赤色が目立たない紙面ではそれ以外の色を使ってもOKです。(むしろそうすべきです)

引出し線を使う

修正したい箇所から線を引き出し、その先に指示や記号を書き込みます(例外もあります)。
1つのページに修正指示がたくさん入るような場合、引出し線同士が交差しないようにする、他の修正したい文字にかからないようにする、といった配慮が必要です。

 

1.削除

削除したい文字に斜線を引き、引出し線の先に「トル」と書きます。削除した部分をそのまま空白にしておきたい場合は、「トルアキ」となります。
2文字以上削除するときは範囲の両端に斜線を引き、その斜線をつなぐように赤線を引きます。

 

2.挿入

文字を入れたい箇所(文字間)にくさび「∨」を打ち、そこから線を引き出します。挿入文字は2本の線ではさみこむようにします。
長文を挿入するときは「※入ル」などのように合印を使って、十分な余白のある箇所に書き込むようにします。別紙を添付するのもよいでしょう。

 

3.修正

修正箇所から線を引き出し、修正後の文字を書き込みます。範囲の示し方は削除のときと同じようにします。

 

4.移動

矩形の一方が開いた形の記号を、移動させたい文字の周りに書き込みます。また、移動先の位置に線を引き、移動する文字から線を伸ばします。
先頭だけ、または末尾だけが移動する場合には、片方の記号のみ記入します。

 

5.入れ替え

連続した文字の前後を入れ替えるときは、該当箇所を逆S字で囲みます。
入れ替える文字が離れた箇所にあるときは、文字を丸で囲み矢印でつなぎます。

 

6.改行・追込み

行を改めたい位置にクランク状の記号を記入します。
逆に2行になっている箇所を1行にしたい場合(追込み)は、前行の最後と次行の先頭を曲線でつなぎます。

 

7.文字間の調整

文字間が詰まりすぎているときは、間を空けたい箇所に「∨」を記入します。
開きすぎているときは「∧」を記入します。

 

8.小書き・または直音にする

「っ」「ゃ」「ゅ」「ょ」のような小書き文字にしたり、逆に小書き文字から普通のかな文字にしたりするときの指示には「∧」「∨」を使います。

 

9.上付き・下付き文字にする

単位や化学式で使うような上付き・下付き文字にするときは、小書き・直音と同じように「∨」「∧」を使います。

 

10.ふりがな・圏点を付ける

ふりがなを付けたい文字の上に赤線を引き、そこから線を引き出してふりがなの文字を記入し、上向きの弧を添えます。
圏点(傍点)は文字の上に点を書き込み、点ごとに上向きの弧を付けます。

 

11.修正指示の取り消し

指示や記号、引出し線を斜線で消し、修正を取りやめる文字の近くに「イキ」と記入します。


※例文は
青空文庫:
芥川龍之介『羅生門
橘外男『蒲団
夏目漱石『吾輩は猫である
坂口安吾『二流の人』『風と光と二十の私と
南方熊楠『十二支考 虎に関する史話と伝説民俗』『十二支考 猪に関する民俗と伝説
中島敦『山月記
太宰治『走れメロス
宮沢賢治『銀河鉄道の夜
新美南吉『手袋を買いに
泉鏡花『一寸怪
佐々木喜善『東奥異聞
折口信夫『死者の書
より使用いたしました。

 

実際に校正記号を使ってみよう

それでは、上で紹介した校正記号を使いながら、サンプルのパンフレットに修正指示を入れてみましょう。
基本のルールにもありましたが、引出し線は線同士が重なったり、他の修正したい要素にかかったりしないように配慮して引き出します。

●曲線で
●シンプルに
●大胆に

を心がけるとよいでしょう。

曲線で」は引出し線がまっすぐ気味だと、打消し線と見間違えるなど紛らわしくなる可能性があるので、それを避けるための工夫です。
 
シンプルに」は引き出しがあまり長くならないよう、最短距離で余白に向けて引き出すイメージです。
 
大胆に」ですが、他の要素にかからないように、と意識しすぎるとかえってわかりにくい線になってしまうことがあります。思い切りよく引き出しましょう。

引出し線が見やすければ、それだけで修正指示の取り違えが起こりにくくなります。
修正指示は

●誰が見てもわかる内容で
●簡潔に
●丁寧に

記入するようにします。

「製品特長を原稿通りに」「製品名正しく」「価格を改定後のものに」といった指示だと、経緯を知らない人にはすぐに理解できません。
画像変更の場合は、絵柄の見間違えを防ぐためにも、差し替え後の画像ファイル名を記入するといいでしょう。

それから、指示はできるだけ丁寧に書くことが大事です。締め切り間際で時間がない状況だと、つい殴り書きになりがちですが、そうした文字は誤読されやすくなります。
きれいな字でなくてもよいので、読み間違えられない字を心がけましょう。


 

記号の正しさにこだわるより わかりやすさを優先

JIS Z 8208に従って修正指示を入れたパンフレットが下の画像です。丸数字は、「よく使う校正記号一覧(JIS Z 8208による)」で紹介した修正指示の番号と対応しています。

※画像をクリックすると拡大表示します。

 
いかがでしょう。だいぶわかりやすい指示原稿になったのではないでしょうか。
ですが……指示を入れたあなたが校正記号を理解していても、修正者が知らない可能性もあります。
直観的に意味を把握しやすい記号とはいえ、「きっとわかってくれるだろう」は禁物。校正記号に補足を書き加えることで、よりわかりやすくなります。
誰が見ても取り違えが起こらない指示原稿を目指しましょう。(ここでは詳しい説明を避けますが、一部の指示はJIS Z 8208の「許容できる使い方」と同じものです)

文字を削除する指示は「トル」ですが、「トルアキ」と取り違えられる可能性もありますので、万全を期すために「トルツメ」と記入します。
また、範囲指定は斜線だと見づらいことがあります。○で囲んだ方が視認しやすいようなら、斜線にこだわらなくてもいいでしょう。


文字を挿入する箇所を示す「∨」は、できるだけ大きく、目立つように記入します。


上にも書きましたが、指示は読み間違えられないことを心がけてください。
「ー(音引き)」と「-(マイナス)」や、「二(漢字)」と「ニ(カタカナ)」などのように、手書きやフォントによっては判別しづらい文字には補足を書き添えましょう。
また、修正する文字が長くなる場合、手書きよりもテキストデータで用意した方が修正間違いが起こりにくいかもしれません。


移動量や、移動の意図がはっきりしている場合は、「2文字分左に」「画像の下端をソロエル」のように記入します。


入れ替えの記号は周りに埋もれてしまいがちなので、補足が必須と考えておきましょう。
文章以外の要素の入れ替え指示に使ってもよいですが、入れ替え範囲をしっかり丸で囲んで示すことが重要です。


こちらも「改行」「次の行とツナグ」といった補足を書き加えます。改行後に字下げをしない場合は、それも忘れずに指示します。


「アキ」や「ツメル」と目立つように書き添えましょう。「全角アキに」「字詰めベタに」のように開ける(詰める)量を指示するのもよいでしょう。


「小サク」「大キク」と書き加えます。行間に十分なスペースがない場合、修正の要領で引出し線を使う手もあります。


上付き・下付き文字も指示が見づらくなるようなら、引出し線で修正指示を入れる形にしましょう。


ふりがなの文字のそばに「ルビ」と書き添えます。モノルビ(1字ごとにふりがなを振る)、グループルビ(何文字かまとめてふりがなを振る)、熟語ルビ(熟語単位でふりがなを振る)の使い分けが必要ならそれも記入しましょう。
圏点は、範囲を丸で囲んで引き出し、「圏点(傍点)ツケル」とした方が見やすくなるケースが多いです。


取り消しが明確にわかるよう、書き込むペンの種類や色を変えるのもいいでしょう。
また、「イキ」の指示は修正を取りやめる箇所近くに記入する、という基本ルールは守るようにします。「イキ」を引き出して書くと、逆に混乱を招く恐れがあります。

※画像をクリックすると拡大表示します。

これらの補足を入れた指示原稿が、上の画像です。
いくつかの指示はJIS Z 8208にない形になりますが、優先すべきは修正指示をわかりやすくする(読み違えられない)ことです。ルールにこだわりすぎず、柔軟に使い分けるようにしましょう。

 

「伝わる」修正指示のために

ここまで校正記号の使い方と、それをわかりやすくする補足について見てきました。最後に、「伝わる(思った通りに直ってくる)」修正指示のために、気を付けたいポイントを3つご紹介したいと思います。

 

1.修正指示は見返す

自分で記入した修正指示は必ず見返すようにしましょう。単純に字を書き間違えていたり、指示を入れる位置がずれていたり、といったミスの防止になります。
 
修正指示を書き間違えると、誰もその間違いに気づかないまま印刷物になってしまう危険性があるので、慎重に。
 
また、見返しながら「これってわかりやすい指示になっているかな?」というセルフチェックも入れるようにします。修正指示を入れる際にやや興奮気味だと、冷静になって見返したときに粗が目立つ、なんてこともあります。

 

2.指示の入れ忘れに注意

立て続けに修正箇所が見つかったときや、まとめて書き込もうとしたときに一部の修正指示を入れ忘れる、というのもよくあることです。直しが上がってきて、「ああ、ここ指示し忘れていた…」となると、工程が余分にかかります。1の内容とも重複しますが、指示漏れがないかのチェックもしておきましょう。

 

3.わかりにくくなってきたら消して書き直す

校正を進めるうちに修正指示がごちゃついてきた、見返して書き直しているうちに見づらくなってきた、という現象も起こりがちです。ごちゃごちゃして見づらい指示原稿は修正ミスが起こりやすくなります。打消し線を使って書き直すのではなく、修正液などで消してから書き直した方がいいでしょう。
消せるボールペンを使うのも一つの手です。ただし、消せるボールペンは長期保存に向かないので、指示原稿をしばらく残しておくなら、スキャンして画像化するなどの対策が必要になります。
また、指示原稿の非改ざん性を証明する必要がある場合は、消せるボールペンは避けるのが無難です。

 

それでも直しが減らないときは!

校正記号の使い方と、漏れや直し違いが減る修正指示の入れ方についてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか? みなさまの日々の業務でお役に立ちましたら幸いです。
私たちタクトシステムではこうしたノウハウを活用し、原稿と校正刷りの突き合わせはもちろん、内容の事実確認や整合性チェックまでお引き受けいたします。なかなか修正が減らない、校正・校閲まで手が回らないというお困りごとがございましたら、ぜひ私たちまでご用命ください!

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