人手不足や業務の効率化が求められる中、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入が、企業の働き方改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の切り札として注目を集めています。
しかしながら、「導入にかかるコストがネック」「補助金があるとは聞いたけど、仕組みが複雑でよくわからない」といった理由で、なかなか一歩を踏み出せないという声も少なくありません。
そこで本記事では、2025年度にRPA導入時に活用できる主要な補助金・助成金制度をわかりやすくまとめました。
各制度の特徴や注意点、申請時のポイントなどもあわせて紹介していますので、「なるべく費用を抑えてRPAを導入したい」という中小企業や個人事業主の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
2025年度に活用できる!RPA導入におすすめの補助金制度
2025年度も、中小企業や小規模事業者を支援するさまざまな補助金制度が用意されています。
その中でも、RPAの導入に活用しやすい補助金を6つピックアップしてご紹介します。
それぞれ目的や対象、補助率に違いがあるため、自社の課題や導入内容に合った制度を選ぶことがポイントです。
中小企業のIT導入を支援する「IT導入補助金」
IT導入補助金1は、中小企業・小規模事業者がITツールを導入して業務効率化や売上アップを目指す際に活用できる補助金制度です。
IT導入補助金は、RPAツールも補助対象となりますが、RPA単体での申請はできません。
必ず会計ソフトや販売管理ソフトなど、業務プロセス用のITツールと組み合わせて申請する必要があります。
補助対象となる経費
- RPAツールのライセンス費用
- 導入に伴う設定・初期構築費
- 操作研修などの関連サービス費用
- クラウド利用料(一定期間分)など
2025年度の主なポイント
項目 | 内容 |
補助額 | 通常枠:A類型(1プロセス以上)5万円~150万円未満、B類型(4プロセス以上)150万円~450万円以下 ※インボイス枠、セキュリティ対策推進枠等は別途上限あり |
補助率 | 原則1/2(「地域別最低賃金+50円以内」の従業員が全体の30%以上の場合は2/3) |
対象 | 中小企業・小規模事業者(業種ごとに資本金・従業員数の上限あり) 医療法人、社会福祉法人、NPO法人等も対象となる場合あり |
要件 | 登録ITベンダーを通じた申請が必須 RPA単体での申請は不可。業務プロセス用ITツールと組み合わせて申請が必要 gBizIDプライム取得、SECURITY ACTION宣言等が必要 |
どんなRPA活用に向いている?
- 帳票処理や定型業務の一部自動化を他の業務ITツールとあわせて検討している企業
- 低コストでスモールスタートしたいケース
申請時の注意点
- 「IT導入支援事業者」への事前相談・登録が必要
- 書類不備や申請ミスで不採択になるケースもある
IT導入補助金のまとめ
IT導入補助金は、比較的申請しやすい制度でありながら、ツールの選定や導入プロセスに一定のルールが設けられています。導入後の活用方法を明確にすることで、より高額な補助を受けられるチャンスにつながります。
高度な自動化や業務改革に活用できる「ものづくり補助金」
ものづくり補助金2は、革新的な製品やサービス開発、業務プロセスの改善などを目的とした中小企業向けの補助金制度です。
RPAを含む業務自動化やシステム構築も対象になるため、大規模なIT投資を考えている企業には特におすすめです。
補助対象となる経費
- RPAツールの導入費用
- 既存システムとの連携構築費
- 業務プロセス全体の自動化設計にかかる業務自動化設計費用
- サーバーやPCなどの関連設備投資 など
2025年度の主なポイント
項目 | 内容 |
補助額 | 製品・サービス高付加価値化枠:750万円~2,500万円(賃上げ特例で最大3,500万円) グローバル枠:3,000万円(賃上げ特例で最大4,000万円)など、 申請枠・従業員数・賃上げ要件によって上限が異なる |
補助率 | 中小企業:1/2(賃上げ要件等を満たす場合は2/3) 小規模事業者・再生事業者:2/3 |
対象 | 中小企業・小規模事業者(製造業、情報サービス業、物流業など。業種ごとに資本金・従業員数の上限あり) 特定事業者やNPO法人等も条件により対象 |
要件 | 革新的な新製品・新サービス開発による高付加価値化 ・付加価値額の年平均3%以上増加 ・給与支給総額の年平均1.5%以上増加 ・事業場内最低賃金を一定額以上引き上げること(賃上げ要件) ※詳細は公募要領参照 |
どんなRPA活用に向いている?
- 既存業務を大幅に自動化・効率化したいケース(例:見積書作成から受発注処理までの一貫自動化)
- 他の業務システムとの連携を含むような中〜大規模な導入計画
- RPAを起点に、業務改革や新サービスの開発を行いたいケース
申請時の注意点
- オーダーメイド枠が廃止され、製品・サービス高付加価値化枠とグローバル枠の2つに変更
- 採択の競争率が高いため、計画の「革新性」や「定量的な効果の根拠」が求められる
- 公募期間が短めなことが多く、スケジュールに余裕を持って準備を進める必要あり
- 申請には「事業計画書」の作成が必要(専門家の支援を受けるのも一手)
ものづくり補助金のまとめ
ものづくり補助金は、単なるRPA導入ではなく、それを活用して業務プロセスをどう変えるかまで問われる補助金です。だからこそ、しっかりとした計画を立てれば、高額な補助を受けられるチャンスがあります。
働き方改革を後押しする「業務改善助成金」
業務改善助成金3は、中小企業が生産性向上を通じて「最低賃金の引き上げ」を図ることを支援する制度です。
生産性向上につながる設備投資や業務プロセスの見直しが対象で、RPA導入による業務効率化も補助対象になります。
補助対象となる経費
- RPAツール導入による作業自動化
- 生産性向上のための業務ソフト導入
- 関連設備・機器の購入・設置費用
- 専門家のアドバイス費用
2025年度の主なポイント
項目 | 内容 |
補助額 | 賃上げ人数や事業場規模等により上限30万円~600万円(特例事業者で10人以上賃上げの場合に最大600万円) |
補助率 | 地域別最低賃金が1,000円未満の事業場は最大4/5、1,000円以上は最大3/4など、要件により異なる |
対象 | 中小企業・小規模事業者(みなし大企業は対象外、個人事業主も可/業種ごとに資本金・従業員数の上限あり) |
要件 | 事業場内最低賃金を30円以上引き上げること 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること 生産性向上のための設備投資等を行うこと 解雇・賃下げ等の不交付事由がないこと |
どんなRPA活用に向いている?
- 単純業務の削減と時間創出を図りたい
- 働き方改革や人手不足対策を進めたい
- 浮いた時間を付加価値業務に回したい
申請時の注意点
- 賃上げとの連動が必須
- 効果の定量的な根拠が必要
- 地域によって相談窓口や手続きが異なる場合も
業務改善助成金のまとめ
業務改善助成金は、単なる設備導入ではなく、労働環境の改善や人材活用の変革とセットであることが前提です。だからこそ、現場の課題と改善計画をしっかり示せば、高額な支援を受けることが可能です。
地方企業を支援する「小規模事業者持続化補助金」
小規模事業者持続化補助金4は、小規模事業者が販路開拓や業務効率化に取り組む際の経費を支援する制度です。特に地方の小規模企業にとって、初期投資の負担を軽減しながらRPAを導入する手段として活用できます。
補助対象となる経費
- RPA導入による業務改善の費用
- 自動化に必要なITツールの導入費
- 外注による構築・設定サポート費
- 広報・販促活動と連動した業務効率化費用
2025年度の主なポイント
項目 | 内容 |
補助額 | 通常枠:上限50万円 特別枠(賃金引上げ枠・卒業枠・後継者支援枠・創業枠):上限200万円 インボイス特例適用時は最大250万円 |
補助率 | 2/3(赤字事業者など一部は3/4) |
対象 | 小規模事業者(商業・サービス業は従業員5人以下、製造業・宿泊業・娯楽業は20人以下など) ※一部NPO法人等も対象 |
要件 | 経営計画に基づく販路開拓等の取り組みであること 商工会・商工会議所の支援を受けて申請すること |
どんなRPA活用に向いている?
- 少人数で業務を回す企業
- 書類作成や請求業務の自動化
- 内製化による外注費の削減
申請時の注意点
- 商工会・商工会議所の支援が必要
- 「経営計画書」提出が必須
- 汎用的な設備は対象外になる可能性あり
小規模事業者持続化補助金のまとめ
この補助金は、業務の効率化を通じて、持続的な事業運営を実現することが目的です。RPAも販路開拓やサービス改善と結びつけることで、より高い補助額を目指すことができます。
地方の先進的取り組みを後押しする「新しい地方経済・生活環境創生交付金」
新しい地方経済・生活環境創生交付金5は、自治体が地域課題を解決するための先進的な取り組みに対して国が支援する制度です。RPAを活用した業務の効率化や地域経済の活性化に向けたプロジェクトが対象になる場合があります。
補助対象となる経費
- RPAを活用した行政事務の効率化事業
- 地域企業の業務自動化プロジェクト
- 自治体や商工会による実証実験関連費用
2025年度の主なポイント
項目 | 内容 |
予算総額 | 2025年度当初2,000億円+補正1,000億円(国から自治体への総交付額) |
補助率 | 自治体や事業内容により異なる(例:1/2、2/3など)」 |
対象 | 地方公共団体(都道府県・市区町村) ※自治体が実施する事業を通じて、地元企業・団体・住民等が参画・支援対象となる場合あり |
要件 | 地域課題の解決を目指した計画が必要 |
どんなRPA活用に向いている?
- 行政手続きの自動化
- 地域事業者を巻き込んだ業務効率化
- 実証実験を通じたモデル構築
申請時の注意点
- 自治体が事業主体となるケースが多い
- 地域ごとに条件や公募スケジュールが異なる
- 採択まで時間を要する可能性あり
新しい地方経済・生活環境創生交付金のまとめ
新しい地方経済・生活環境創生交付金は、単なるITツール導入ではなく、地域に対する波及効果や他事業者との連携までを含めた「仕組みの提案」が求められます。だからこそ、綿密な連携体制とビジョンが鍵になります。
働き方改革と業務効率化を支援する「人材開発支援助成金」
人材開発支援助成金6は、企業が従業員に対して実施する職業訓練やスキルアップの取り組みに対し、その費用を国が支援する制度です。RPAの操作研修や運用トレーニングも対象になるため、導入後の人材育成に活用できます。
補助対象となる経費
- RPA導入時の従業員研修費
- 外部講師によるトレーニング費
- 研修用テキストや教材費
- OJTにかかる費用など
2025年度の主なポイント
項目 | 内容 |
賃金助成 | 1人1時間あたり上限1,000円(2025年度拡充) ※訓練区分や条件により異なる |
経費助成率 | 中小企業:75%、大企業:60%(訓練区分等により異なる場合あり) |
対象 | 雇用保険適用事業所の中小企業・大企業 |
要件 | 訓練実施前に労働局へ訓練計画を提出し、承認を受ける必要あり |
どんなRPA活用に向いている?
- 社内定着を目的とした研修
- RPA人材の内製化を目指す企業
- 操作スキルの標準化を図りたいケース
申請時の注意点
- 研修計画の事前承認が必要
- 成果報告や記録保存が義務
- 業務との関連性を明確にすることが重要
人材開発支援助成金のまとめ
人材開発支援助成金は、RPAの導入効果を最大化する「人材育成」の視点を持つ企業にとって有効な制度です。研修内容と業務の接続性を意識した計画を立てることで、高い補助率の恩恵を受けられます。
なぜRPA導入に補助金が使えるの?

RPAは、これまで人の手で行っていた定型業務を自動化することで、作業時間を大幅に削減できる便利なツールです。
たとえば、毎日の請求書作成や勤怠データの集計、受発注処理など、面倒なルーチン作業をRPAに任せることで、担当者はよりクリエイティブで価値の高い業務に集中できるようになります。
こうした業務効率化や生産性向上の取り組みは、まさに国や自治体が推進している「働き方改革」や「中小企業支援」と方向性が一致しています。
そのため、RPAの導入は国の補助金や助成金の対象になるケースが多いのです。
具体的には、以下のような目的で補助金が用意されています。
- 人手不足対策(作業の自動化で負担を軽減)
- 業務効率化による生産性向上
- DX(デジタル化)推進
- 地域経済の活性化・中小企業支援
補助金制度の多くは、ITツールの導入やシステム開発を支援する内容になっており、RPAツールもその中に含まれます。
RPA補助金の申請で注意したい5つのポイント

補助金の申請は、単に「導入したいツールがある」だけでは通りません。
審査では、導入の背景や目的、効果、実現性が問われます。
RPA導入を成功させ、補助金を有効に活用するために、特に押さえておきたいポイントを5つにまとめました。
① 交付決定前の契約・発注はNG
補助金制度では、交付決定通知を受け取る前に契約や支払いを行うと補助対象外になります。
導入を急ぐあまり、先に契約してしまうと補助金が下りないリスクがあるので注意が必要です。
スケジュール管理がカギになります。
② RPA単体では採択されにくい場合も
RPAは業務効率化に貢献するツールですが、「ツールを入れるだけ」では審査が通らないケースもあります。
具体的な業務改善の流れや、従業員の働き方への影響、収益への効果など、事業全体の中でRPAをどう活用するかを明確にする必要があります。
③ 専門家のサポートを活用しよう
申請書の作成や事業計画の立案には専門的な視点が求められます。
IT導入支援事業者や中小企業診断士、商工会などのサポートを受けることで、採択率アップが期待できるだけでなく、申請作業の負担も軽減できます。
補助金制度によっては、支援者との連携が必須になることもあります。
④ 効果測定の視点を計画に入れる
審査では「このツールでどのように成果を出すか」も重視されます。
導入後に業務がどう改善されるのか、その効果をどう測るのかといった視点を計画書に盛り込むことで、説得力のある申請書が作れます。
作業時間の短縮やエラー削減など、数値での目標設定が効果的です。
⑤ 自社に合ったRPAツール選びが重要
RPAにはさまざまな種類があり、機能や価格も異なります。
「補助金が出るからこのツールにする」ではなく、自社の業務フローに本当に合ったRPAを選ぶことが成功の鍵です。
導入後の運用・メンテナンスのしやすさも視野に入れましょう。
補助金を活用して、RPA導入を賢く始めよう
RPAは、定型業務を自動化し、業務の効率化や生産性向上に大きく貢献するツールです。
導入にはコストがかかりますが、補助金制度をうまく活用すれば、コストを抑えつつ導入することが可能です。
補助金制度ごとに対象や要件が異なるため、常に最新情報をチェックしながら、適切な制度を選ぶことが重要です。
タクトシステムでは、補助金申請についてのサポートも行っておりますので、利用を検討されている方はお気軽にご相談下さい。
補助金をうまく使って、業務効率化をスムーズに進めていきましょう。
※本記事の内容は2025年5月時点の情報をもとに作成しています。補助金制度は年度や政策により変更される場合があります。必ず最新の公募要領や公式サイトをご確認の上、ご検討ください。
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RPAツールSynchRoidをはじめ、複数のRPAツール導入支援を行っています。