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RPA資格はどれを選ぶ?主要5資格の難易度・費用を比較

企業の業務効率化において、RPA(Robotic Process Automation)は今や欠かせないツールとなっています。

RPA導入を成功させるには、適切な人材育成が不可欠です。そして、この人材育成の成果の証明となるのがRPA資格です。

RPAに関する資格は多岐にわたり、それぞれ特徴や対象とするスキルが異なります。

また、RPA資格は国家資格ではなく、各ツールベンダーが独自に認定する民間資格であるため、資格ごとに目的や難易度、認知度に違いがあります。

本記事では、DX推進を担う皆様が、自社に最適なRPA資格を選び、効率的な人材育成を進めるための具体的な情報を提供します。

 

RPA資格選びの判断基準

数あるRPA資格の中から、自社に最適なものを選ぶためには、いくつかの判断基準を持つことが重要です。

 

目的に応じた選び方

RPA資格取得の目的

RPA資格を取得する目的は、企業や個人の状況によって様々です。

  • 社内でのRPA推進・内製化
    自社でRPAの開発・運用・保守ができる人材を育成し、外部ベンダーへの依存度を下げたい場合は、実践的な開発スキルや運用管理に関する知識が問われる資格が適しています。例えば、自社で導入しているRPAツールの公式認定資格などがこれに該当します。
  • RPA導入プロジェクトの推進・管理
    導入済み、あるいは導入を検討しているRPAツールの特性を理解し、適切なプロジェクトマネジメントができる人材を育成したい場合は、各ツールの機能や導入事例、ベストプラクティスに関する知識が問われる資格が有効です。
  • RPA関連業務へのキャリアアップ・転職
    将来的にRPAエンジニアやコンサルタントとして活躍できる人材を育成したい場合は、市場価値の高い資格や、複数のRPAツールに対応できる汎用的なスキルを証明できる資格が有利です。

自社のRPA戦略と照らし合わせ、どのようなスキルを持った人材が必要なのかを明確にすることで、選ぶべき資格が見えてきます。

 

費用対効果の考え方

RPA資格の取得には、受験費用だけでなく、学習教材費、研修費用、そして何よりも従業員の学習時間というコストがかかります。これらの投資に見合うリターンが得られるかを慎重に検討する必要があります。

費用対効果を考える上で、以下の点を考慮しましょう。

  • 資格取得による具体的な効果
    資格取得によって、業務効率がどれだけ向上するか、エラーがどれだけ減少するか、あるいは外部委託費用をどれだけ削減できるかなど、具体的な効果を試算します。
  • 人材の定着・モチベーション向上
    資格取得支援は、従業員のスキルアップに対する企業の投資姿勢を示すものであり、従業員のモチベーション向上やエンゲージメント強化にもつながります。これは、長期的な視点での人材の定着にも寄与します。
  • 市場価値の向上
    従業員が資格を取得することで、社外に対してもRPAに関する専門性を示すことができ、企業のブランドイメージ向上にも貢献します。

単に費用が安いからという理由で資格を選ぶのではなく、投資額に対して得られる効果が最大化されるものを選ぶ視点が重要です。

 

主要RPA資格の比較表

ここでは、現在市場で特に注目されている主要なRPAツールに関連する資格を5つピックアップし、それぞれの特徴を比較します。

ツールの種類 主な特徴 日本での認知度/市場シェア 難易度(目安)
WinActor 日本企業での導入実績が多く、日本語情報が豊富
UiPath 世界シェアNo.1、開発者コミュニティが活発 中~高
Automation Anywhere 無料学習コンテンツが充実、手軽に始められる
Blue Prism 大規模な企業システムでの導入実績、堅牢性
Microsoft Power Automate Office製品との連携が強み、幅広い用途に対応 中~高

 

WinActor:日本企業での認知度が高い 

NTTアドバンステクノロジが開発したWinActorは、日本国内で非常に高いシェアを誇るRPAツールです。そのため、WinActorの資格は、日本のビジネス環境において特に役立つ可能性が高いです。

  • 資格の種類
    「RPA技術者検定」として、基本機能と基本操作の認定を行う「RPA技術者検定アソシエイト」と、より高度なスキルを問う「RPA技術者検定エキスパート」の2種類があります。
  • 特徴
    純国産ツールであり、日本語での情報が豊富です。日本の商習慣に合わせた機能が多く、RPAを初めて導入する企業にとっても導入しやすいのが特徴です。
  • 推奨される企業
    国内の企業でWinActorを導入済み、または導入を検討している企業。社内でRPAの内製化を進めたい企業。

 

UiPath:世界シェアNo.1の実績

UiPathは、世界中で最も利用されているRPAツールの1つであり、その資格はグローバルな市場で通用するスキルを証明できます。開発コミュニティも非常に活発で、情報収集やスキルアップの機会に恵まれています。

  • 資格の種類
    「オートメーションデベロッパーアソシエイト」、「オートメーションデベロッパープロフェッショナル」ほか、目的に応じた複数の資格があります。
  • 特徴
    直感的な操作性で開発しやすく、拡張性も高いため、大規模なRPA導入にも対応できます。AI連携機能も充実しており、高度な自動化を実現できます。
  • 推奨される企業
    グローバルなビジネス展開をしている企業、または将来的に高度なRPAソリューションを導入したい企業。RPAエンジニアとしてのキャリアアップを目指す人材の育成。

 

Automation Anywhere:無料で始められる

Automation Anywhereは、クラウドベースのRPAソリューションを提供しており、無料で利用できる学習コンテンツが充実している点が魅力です。手軽にRPA学習を始めたい企業にとって、非常にハードルが低い選択肢となります。

  • 資格の種類
    「Essentials Certification」「Advanced Certification」「Master Certification」など、開発者向けの資格が用意されています。
  • 特徴
    クラウドネイティブなプラットフォームであり、スケーラビリティに優れています。AIとの連携も強化されており、より複雑な業務プロセスの自動化に適しています。
  • 推奨される企業
    クラウドベースのRPA導入を検討している企業。コストをかけずにRPA学習を始めたい企業。

 

Blue Prism:大企業での導入実績

Blue Prismは、エンタープライズ向けのRPAソリューションとして、特にセキュリティとガバナンスを重視する大企業での導入実績が豊富です。

  • 資格の種類
    「SS&C | Blue Prism® Associate Developer Certification」、「SS&C | Blue Prism® Developer Certification」「SS&C | Blue Prism® Professional Developer Certification」など、複数の種類があります。
  • 特徴
    堅牢な設計と高いセキュリティ機能が特徴で、金融機関や政府機関など、厳格なセキュリティ要件が求められる環境での利用に適しています。
  • 推奨される企業
    大規模なRPA導入を検討しており、セキュリティとガバナンスを重視する企業。

 

Microsoft Power Automate:Office連携が強み

Microsoft Power Automateは、Microsoft 365のエコシステムに統合されたRPAツールであり、ExcelやOutlookといったOffice製品との連携が非常にスムーズです。日常業務の自動化から高度なワークフロー構築まで、幅広い用途に対応できます。

  • 資格の種類
    「Microsoft 認定: Power Automate RPA Developer Associate」。Power Platform全体の資格の一部としてRPAに関するスキルも評価されます。
  • 特徴
    Microsoft製品との連携が容易なため、既にMicrosoft 365を導入している企業にとっては、導入障壁が低いのが最大のメリットです。AI Builderとの連携で、より高度な自動化も可能です。
  • 推奨される企業
    Microsoft 365を業務で活用している企業。Office製品を活用した業務自動化を推進したい企業。

 

目的別おすすめ資格

自社の目的別に、どのようなRPA資格おすすめなのかを見ていきましょう。

 

転職を有利にしたい場合

RPAエンジニアやRPAコンサルタントとしてのキャリアアップを視野に入れている場合は、市場価値の高い資格を選ぶことが重要です。

  • UiPath認定資格
    世界的なシェアが高く、国内外での需要が非常に高いため、転職市場において強力なアピールポイントとなります。
  • Blue Prism認定資格
    大企業での導入実績が多いため、エンタープライズ向けのRPA案件に携わりたい場合に有利です。
  • 複数のRPAツールの資格
    特定のツールに縛られず、複数のRPAツールに対応できるスキルを証明することで、より幅広い求人に対応できるようになります。

 

社内でRPAを推進したい場合

自社でRPAの内製化を進め、業務効率を継続的に改善していきたい場合は、自社で導入しているRPAツールの公式資格が最も適しています。

  • WinActor認定資格
    日本企業での導入実績が多く、日本語での学習リソースも豊富なため、日本国内の企業でRPAを推進する上で非常に実用的です。
  • Microsoft Power Automate認定資格
    既にMicrosoft 365を導入している企業であれば、既存のIT環境との親和性が高く、導入・運用がスムーズに進められます。
  • 導入済みRPAツールの公式資格
    既に特定のRPAツールを導入している場合、そのツールの公式資格を取得することで、社内での開発・運用・保守体制を強化し、ベンダーへの依存を減らすことができます。

 

副業で活用したい場合

RPAスキルを活かして副業を考えている場合は、クラウドソーシングサイトなどで需要の高いRPAツールの資格や、汎用性の高いスキルを証明できる資格が有効です。

  • UiPath認定資格
    フリーランスとしてRPA開発案件を受注する場合、UiPathは最も案件数が多いため、収益化しやすいでしょう。
  • Automation Anywhere認定資格
    無料で学習を始められるため、初期投資を抑えつつRPAスキルを身につけたい場合に適しています。
  • 複数のRPAツールを習得
    複数のRPAツールの知識と経験があれば、より多くの案件に対応でき、副業の機会を広げることができます。

 

各資格の難易度と学習時間

RPA資格難易度は、ツールの複雑さや問われるスキルレベルによって大きく異なります。

 

合格率と必要な学習期間

RPA資格の具体的な難易度や合格率は公開されていないことが多いですが、一般的に以下の傾向が見られます。

  • 初級レベルの資格(例:UiPath オートメーションデベロッパーアソシエイトWinActor RPA技術者検定アソシエイト
    難易度:中程度。RPAの基本的な概念や、簡単なシナリオ作成スキルが問われます。
    学習期間:30時間~100時間程度。RPAの経験がない方でも、公式ドキュメントやオンライン学習プラットフォームを活用すれば、比較的短期間での取得が可能です。
  • 上級レベルの資格(例:UiPath オートメーションデベロッパープロフェッショナルWinActor RPA技術者検定エキスパート
    難易度:高い。複雑なシナリオ開発、エラーハンドリング、運用管理、API連携など、より高度なスキルと実践的な知識が問われます。
    学習期間:100時間~300時間以上。実務経験がある方が有利であり、体系的な学習と演習を繰り返す必要があります。

 

実務経験の必要性

多くのRPA資格は、単なる知識だけでなく、実際にRPAツールを操作してシナリオを作成する実務経験が問われます。特に上級資格では、複雑な問題解決能力やベストプラクティスに関する深い理解が求められるため、座学だけでなく、実際に手を動かす経験が不可欠です。

企業として従業員にRPA資格を取得させる場合、座学研修だけでなく、OJT(On-the-Job Training)や実践的なプロジェクトへの参加を通じて、実務経験を積ませる機会を提供することが重要です。

 

資格の受験費用

RPA資格の取得には、受験費用、学習教材費用、必要であれば研修費用といったコストがかかります。これらの総費用を把握し、それに見合う投資回収が見込めるかを検討しましょう。

 

資格ごとの受験費用比較

ツールの種類 費用
WinActor RPA技術者検定アソシエイト:7,150円(税込)
RPA技術者検定エキスパート:21,780円(税込)
UiPath オートメーションデベロッパーアソシエイト:21,000 円(税別)
オートメーションデベロッパープロフェッショナル:42,000円 (税別) 
Automation Anywhere Essentials Certification:無料
Advanced Certification:80ドル
Master Certification:130ドル
Blue Prism SS&C | Blue Prism® Associate Developer Certification:15,200円
SS&C | Blue Prism® Developer Certification:16,000円
SS&C | Blue Prism® Professional Developer Certification:16,000円
Microsoft Power Automate Microsoft 認定: Power Automate RPA Developer Associate:20,300円 

※上記費用はあくまで目安であり、為替レートや提供機関によって変動する可能性があります。

多くのRPAツールベンダーは、無料または低価格で利用できるオンライン学習プラットフォームを提供しています。これらを積極的に活用することで、学習コストを抑えることが可能です。

 

年収アップ効果の例

RPA資格の取得は、個人のスキルアップだけでなく、企業全体の生産性向上、ひいては従業員の年収アップにもつながる可能性があります。

  • 業務効率化による生産性向上
    資格取得者がRPAを活用して業務を自動化することで、人件費削減や残業時間の削減、エラー率の低下など、直接的なコスト削減に貢献します。これにより、企業全体の収益性が向上し、従業員への還元につながる可能性があります。
  • RPA人材の希少価値
    RPAの導入・運用スキルを持つ人材はまだ不足しており、特に高度なRPAスキルを持つエンジニアは市場価値が高く評価されます。企業内においても、RPA推進の中心となる人材には、専門性の高いポジションや手当が与えられるケースがあります。
  • 新規事業創出への貢献
    RPAを活用した新しいビジネスモデルやサービスの創出に貢献できる人材は、企業の競争力向上に直結します。このような人材は、企業の成長と共に、より高い報酬を得られる可能性が高まります。

具体的な年収アップ額は企業や個人のパフォーマンスに依存しますが、RPAスキルは、現在のビジネス環境において個人と企業の双方にとって強力な武器となることは間違いありません。

 

まとめ:あなたに適したRPA資格

本記事では、企業のDX担当者向けに、主要なRPA資格の一覧、難易度、費用、そして取得による効果について詳しく解説しました。

RPA資格選びで最も重要なのは、自社のRPA導入・推進の目的を明確にすることです。

  • 特定のRPAツールを導入済みであれば、そのツールの公式資格が最も実用的です。
  • これからRPA導入を検討しているのであれば、UiPathやWinActorなど、市場シェアの高いツールの資格から検討するとよいでしょう。
  • RPAエンジニア育成を目指すのであれば、実務経験を積ませながら、より高度な難易度の資格に挑戦させるのが効果的です。

RPA資格はツール操作の習得を目的としていますが、実務で成果を出すには業務プロセスの理解やIT全般の知識も重要視されているため、これらをバランスよく身につけることが望まれます。

適切なRPA資格を選び、効果的な人材育成を進めることで、貴社のDX推進が加速することを願っています。

 

  • この記事を書いた人
RPA開発チーム

タクトシステムRPAチーム

タクトシステムのRPA導入・開発・運用サポートや生成AIの運用を行うチームです。 RPAや生成AIに関する基本から活用の応用編まで、役に立つ情報を分かりやすく発信します。

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